海外ファンドで作る“ミドルリスク、ハイリターン”ポートフィリオ
- 2008/06/28
- 13:24
今回はリターンを高めに維持しながら、皆さんの資産のリスクを下げる方法を御紹介したいと思います。
その前に、「リスクとは何か」について考えてみましょう
一般に生活の中で「リスク」といえば、危険とか危機という意味合いで使われますよね。
ところが金融の世界でこの「リスク」という言葉を使う場合、それは大まかに申し上げて下記のような意味合いで使われます。
1.投資対象の証券などが無価値になるリスク(信用リスク)
2.投資対象の証券などが売却できないリスク(流動性リスク)
3.投資対象の証券などの価格が変動するリスク(価格変動リスク)
主に、この3つのリスクに分けることができます。
なかでも3番目の「価格変動リスク」は投資の世界では重視され、
特に断り無く「リスク」という言葉を使う場合、この「価格変動リスク」のことを指す場合が多いです。
ここまでお話すれば、多くの読者の皆さんは価格が上の方向に変動(即ち上昇)することも「リスク」なのか?という疑問をお持ちになると思います。
が、投資の世界では「価格の(急激な)上昇」も「リスク」と考えています。
不思議でしょ
確かに価格が急に上昇しても、そのままの勢いで上昇し続ければそれは「リスク」とはいえませんが、ものの値動きというのは短期の上下動を繰り返しながら、大きなトレンドを形成する場合が多く、短期的な上昇はやがてどこかで反転すると考えられるわけですね。
であれば、確かに上への値動きも「リスク」として認識しておいたほうが良いということになるわけです。
さて、このリスク(ここからは「値動きの激しさ」という意味で使います)ですが、実は「標準偏差」という指標を使って、数値で客観的に表現することができます。
「標準偏差」という言葉を聞いただけで、鳥肌が立つひともいらっしゃると思いますが、実はそれほど難しいものではありません。
「標準偏差」というのは、上記の「値動きの激しさ」を表す指標で、これが大きければ大きいほど「激しく値動きする商品」、言い換えれば「リスクの高い商品」ということになります。
ではさらに例を挙げてご説明させて頂きましょう。
よくヘッジファンドのパンフレットなどを見ますと
・過去の年率平均リターン 18%
・過去の年率リスク(標準偏差) 16%
などと書かれています、これはどういう事かといいますと、この
ファンドは過去実績ベースでは
・年率2%から年率34%の間にほぼ68%の確率で収まった
・年率-14%から年率50%の間にほぼ95%の確率で収まった
という事を意味しています(ただし、サンプル数が十分に足りていると仮定
した場合ですが)。
標準偏差というのは、68%の確率で収まる範囲を示しているのです。
このファンドに当てはめてみますと、平均的な年間のリターンである18%を中心に、リスク(標準偏差)一つ分(16%)を上下に広げたところに68%の確率で収まることになります。
そこで
上は 18%+16%で34%
下は 18%-16%で-2%
となり、-2%から+34%の範囲に68%の確率で収まるということになるわけです。68%では心もとないという方は「標準偏差」二つ分(32%)を見ておけば95%をカバーできますので、ほぼ間違いないということになるでしょう。
この場合
上は 18%+16%+16%で50%
下は 18%-16%-16%で-14%
となり、このファンドの年間のリターンは-14%から+50%の範囲にほぼ(約95%の確率で)収まるということが言えます。
一般にリターンに比べ、このリスクが小さければ小さいほど優秀なファンドであると言われています
ただ、一つ一つ個別の金融商品を見れば、リスクに比べリターンの大きな商品は、買い進められ、結果として価格が上昇し、逆にリターンは下がります。
結果的にローリスク(あるいはミドルリスク)でかつハイリターンの金融商品などにはそうそう出会えません。
ところが、複数の金融商品を組み合わせ、資産全体として見た場合、ローリスク(あるいはミドルリスク)でかつハイリターンなポートフォリオを作ることは可能です。
例えば、Aというファンドのここ10年間の年間リターンの推移が
・-10.3%
・+20.7%
・+62.6%
・+25.4%
・+23.2%
・+18.8%
・+38.2%
・+24.3%
・+11.0%
・-3.3%
だったとしましょう。
この間のこのファンドの実績は
・年間平均リターン21.1% (ただし、単純平均)
・年間の平均リスク 20.4%
となります。
また、別にBという下記のようなファンドがあったとしましょう。
・+58.5%
・+76.7%
・+41.6%
・+54.8%
・-11.2%
・-19.4%
・+41.4%
・+26.3%
・+16.0%
・+108.3%
この間のこのファンドの成績をまとめますと
・年間平均リターン +35.3%
・年間の平均リスク 68.9%
となります。
それぞれリターンもそこそこありますが、リスクも高いですね。いずれも極めてハイリスク・ハイリターンに分類してしまっていいでしょう。
では、仮にこれらファンドを50%対50%の比率でもてばどうでしょうか。
まず、例によりまして、簡単なリターンのほうから見てみますと。
(21.1%+35.3%)÷2=28.2%
と計算できます、さて問題のリスクはといいますと、少し計算式が複雑ですので、端折らせていただきますが、
これら2ファンドの相関係数は-0.26となり、やや弱いながらも逆の相関性があるといえます。
この相関係数を用いて、このポートフォリオのリスクは17.2%と計算できました。
以上の結果をまとめますとこのようになります。
□ファンドA
・年間平均リターン21.1%
・リスク(年率標準偏差) 20.4%
□ファンドB
・年間平均リターン +35.3%
・リスク(年率標準偏差) 68.9%
□ファンドAとファンドBに50%づつ投資
・年間平均リターン +28.2%
・年間の平均リスク 17.2%
この結果をもう一度よくご覧になってください。
いかがでしょうか
各ファンドに50%ずつ投資したポートフォリオはリスクがA,Bそれぞれ単体で保有するより随分と低く抑えられていますね、一方でリターンはといいますと、AとBの平均値をとっています。
このポートフォリオでは、リスクが17%とまだまだ高く、ミドルリスクとは呼べませんが、さらに相関性の低い(あるいは、逆相関性の高い金融商品を見つけてあげれば、結果としてリスク(価格変動)をさらに下げることが可能です。
ちなみに、ファンドAもファンドBも実在のファンドです。
このように相関性の低い(あるいは逆相関性のある)複数の金融商品をうまく組み合わせることにより、皆さんの資産はリターンを維持しながらもリスク(値動き)だけを下げる事ができるわけです。
今回はこのへんで。
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その前に、「リスクとは何か」について考えてみましょう
一般に生活の中で「リスク」といえば、危険とか危機という意味合いで使われますよね。
ところが金融の世界でこの「リスク」という言葉を使う場合、それは大まかに申し上げて下記のような意味合いで使われます。
1.投資対象の証券などが無価値になるリスク(信用リスク)
2.投資対象の証券などが売却できないリスク(流動性リスク)
3.投資対象の証券などの価格が変動するリスク(価格変動リスク)
主に、この3つのリスクに分けることができます。
なかでも3番目の「価格変動リスク」は投資の世界では重視され、
特に断り無く「リスク」という言葉を使う場合、この「価格変動リスク」のことを指す場合が多いです。
ここまでお話すれば、多くの読者の皆さんは価格が上の方向に変動(即ち上昇)することも「リスク」なのか?という疑問をお持ちになると思います。
が、投資の世界では「価格の(急激な)上昇」も「リスク」と考えています。
不思議でしょ
確かに価格が急に上昇しても、そのままの勢いで上昇し続ければそれは「リスク」とはいえませんが、ものの値動きというのは短期の上下動を繰り返しながら、大きなトレンドを形成する場合が多く、短期的な上昇はやがてどこかで反転すると考えられるわけですね。
であれば、確かに上への値動きも「リスク」として認識しておいたほうが良いということになるわけです。
さて、このリスク(ここからは「値動きの激しさ」という意味で使います)ですが、実は「標準偏差」という指標を使って、数値で客観的に表現することができます。
「標準偏差」という言葉を聞いただけで、鳥肌が立つひともいらっしゃると思いますが、実はそれほど難しいものではありません。
「標準偏差」というのは、上記の「値動きの激しさ」を表す指標で、これが大きければ大きいほど「激しく値動きする商品」、言い換えれば「リスクの高い商品」ということになります。
ではさらに例を挙げてご説明させて頂きましょう。
よくヘッジファンドのパンフレットなどを見ますと
・過去の年率平均リターン 18%
・過去の年率リスク(標準偏差) 16%
などと書かれています、これはどういう事かといいますと、この
ファンドは過去実績ベースでは
・年率2%から年率34%の間にほぼ68%の確率で収まった
・年率-14%から年率50%の間にほぼ95%の確率で収まった
という事を意味しています(ただし、サンプル数が十分に足りていると仮定
した場合ですが)。
標準偏差というのは、68%の確率で収まる範囲を示しているのです。
このファンドに当てはめてみますと、平均的な年間のリターンである18%を中心に、リスク(標準偏差)一つ分(16%)を上下に広げたところに68%の確率で収まることになります。
そこで
上は 18%+16%で34%
下は 18%-16%で-2%
となり、-2%から+34%の範囲に68%の確率で収まるということになるわけです。68%では心もとないという方は「標準偏差」二つ分(32%)を見ておけば95%をカバーできますので、ほぼ間違いないということになるでしょう。
この場合
上は 18%+16%+16%で50%
下は 18%-16%-16%で-14%
となり、このファンドの年間のリターンは-14%から+50%の範囲にほぼ(約95%の確率で)収まるということが言えます。
一般にリターンに比べ、このリスクが小さければ小さいほど優秀なファンドであると言われています
ただ、一つ一つ個別の金融商品を見れば、リスクに比べリターンの大きな商品は、買い進められ、結果として価格が上昇し、逆にリターンは下がります。
結果的にローリスク(あるいはミドルリスク)でかつハイリターンの金融商品などにはそうそう出会えません。
ところが、複数の金融商品を組み合わせ、資産全体として見た場合、ローリスク(あるいはミドルリスク)でかつハイリターンなポートフォリオを作ることは可能です。
例えば、Aというファンドのここ10年間の年間リターンの推移が
・-10.3%
・+20.7%
・+62.6%
・+25.4%
・+23.2%
・+18.8%
・+38.2%
・+24.3%
・+11.0%
・-3.3%
だったとしましょう。
この間のこのファンドの実績は
・年間平均リターン21.1% (ただし、単純平均)
・年間の平均リスク 20.4%
となります。
また、別にBという下記のようなファンドがあったとしましょう。
・+58.5%
・+76.7%
・+41.6%
・+54.8%
・-11.2%
・-19.4%
・+41.4%
・+26.3%
・+16.0%
・+108.3%
この間のこのファンドの成績をまとめますと
・年間平均リターン +35.3%
・年間の平均リスク 68.9%
となります。
それぞれリターンもそこそこありますが、リスクも高いですね。いずれも極めてハイリスク・ハイリターンに分類してしまっていいでしょう。
では、仮にこれらファンドを50%対50%の比率でもてばどうでしょうか。
まず、例によりまして、簡単なリターンのほうから見てみますと。
(21.1%+35.3%)÷2=28.2%
と計算できます、さて問題のリスクはといいますと、少し計算式が複雑ですので、端折らせていただきますが、
これら2ファンドの相関係数は-0.26となり、やや弱いながらも逆の相関性があるといえます。
この相関係数を用いて、このポートフォリオのリスクは17.2%と計算できました。
以上の結果をまとめますとこのようになります。
□ファンドA
・年間平均リターン21.1%
・リスク(年率標準偏差) 20.4%
□ファンドB
・年間平均リターン +35.3%
・リスク(年率標準偏差) 68.9%
□ファンドAとファンドBに50%づつ投資
・年間平均リターン +28.2%
・年間の平均リスク 17.2%
この結果をもう一度よくご覧になってください。
いかがでしょうか
各ファンドに50%ずつ投資したポートフォリオはリスクがA,Bそれぞれ単体で保有するより随分と低く抑えられていますね、一方でリターンはといいますと、AとBの平均値をとっています。
このポートフォリオでは、リスクが17%とまだまだ高く、ミドルリスクとは呼べませんが、さらに相関性の低い(あるいは、逆相関性の高い金融商品を見つけてあげれば、結果としてリスク(価格変動)をさらに下げることが可能です。
ちなみに、ファンドAもファンドBも実在のファンドです。
このように相関性の低い(あるいは逆相関性のある)複数の金融商品をうまく組み合わせることにより、皆さんの資産はリターンを維持しながらもリスク(値動き)だけを下げる事ができるわけです。
今回はこのへんで。
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